近年、定年を延長する会社も出てきているようです。また、定年はそのままにしておき、定年後再雇用の期間を延ばす会社もあるようです。
このように社員が就業する期間は、次第に先へ伸びております。
もちろん、法改正などの国の施策もありますので、その前に定年を延長しておこうということなのでしょう。
そして定年退職予定者もそれなりに増えてきており、定年を延長せざるを得ないという企業側の事由もあるのです。
高年齢者に対する雇用の確保の措置
定年延長の措置は、年金問題とも絡んでおります。
政府としては、将来を考え年金受給年齢を引き上げたいと思いっておりますが、企業としては、定年延長などの措置をとることで、社員の平均年齢が上がってしまいます。
社員の入れ替え等で平均年齢はある程度のところに抑えておきたいところです。
しかし、世の中には必ずしも、政府の要請や法改正に従って定年の引き上げをしたり、再雇用年齢の引き上げを行ったりする企業ばかりではありません。
自ら時代を先取りし、定年延長等の措置を実施する企業もあります。もちろん、前に記載したように、企業側の事情もあります。
その他、会社の代表者の意向もあり、対応している会社もあるのです。
こうしたことは、世の中の課題を解決するための時代の要請、ということになります。
しかも、将来的に社員の人たちの働く期間がさらに伸びていくことになる可能性があります。
そのため、会社としても長期的な視点で対応策を講じる必要が出てきます。
社員の働く期間を延ばす場合、定年延長や、定年後再雇用の期間を延ばすということが一般的です。
企業が実際に利用できるのは、定年後再雇用期間の延長が対応しやすいでしょう。
かつて、企業の定年が60歳のころに、政府が国内のすべての企業に対して、定年を廃止するか、定年を延長するか、60歳定年後再雇用するか、3つの選択肢から一つ選ぶよう要請があったことがあります。
その時は、大半の企業が60歳定年後再雇用を選択しました。社内の人員のバランスやコストなどの面での対応かもしれませんが、そのようになりました。
このように多くの企業は、既に定年後の再雇用制度を導入し運用しています。
定年後再雇用制度の実態
しかし、再雇用の期間延長の措置を取っても、課題は生じます。
それは、既に導入している、定年後再雇用制度上での問題でもあるのです。
運用上、比較的多く生じる問題としては、仕事の中身が正社員のころと変わらず、給与のみが減額してしまうというケースです。
社員の側からすれば、仕事の大変さは変わらないのに、給与だけ減額してしまう、ということで仕事に対する活力が失われてしまいます。
一方、定年後の再雇用の社員が働いている部署の上司からしても、その社員に与える仕事を一般の社員と分けて与えようとしてもその区分けが難しく、しかも自分より年上だと、簡単な仕事も頼みづらいという問題もあります。
このようなケースで、訴訟に至ったこともあり、会社としても難しい対応を迫られます。
定年後再雇用社員への対応
そこで、検討しなければならないことは、給与に応じた仕事を社員に与え、社員の側も納得して業務に就くようにすることです。
とはいえ、なかなかできるものではありません。
一つの方法として、業務を細かく細分化し、給与に応じて細分化された仕事を与えるようにする方法が考えられます。
これは簡単ではありませんが、日常業務をいくつか区分けすることはできるでしょう。
その中から該当者が行っている業務を区分けして、減らすことにより、その人に対しては実態にあった再雇用の業務といえると思います。
しかし、残った業務を誰が行うのかという新しい問題が生じます。
現在は定年の年齢に達しても、まだまだ体力はありますから、給与を同じにして仕事も同じにしても大丈夫かもしれません。
ただ、これでは現状と何ら変わりません。定年延長であれば、いいのですが、再雇用制度であれば、工夫を加える必要があります。
一方で、再雇用該当者に新しい仕事を割り当てるという仕組みもあります。
たとえば、後任の指導とか、過去の実績の文書化とか、方法はいろいろあると思います。
ただし、新しい仕事でも、中には1、2年で終わってしまう業務もあるでしょう。そのような業務では、その後の仕事がありません。また元の仕事に戻ってしまいます。
元の仕事に戻ったとしても、上記で述べたように、仕事を細分化し、体力に応じた業務量にします。
(再雇用者に対する仕事に関しては、弊社ブログ『正規社員と非正規社員との間の業務バランスの調整』をご参照ください。)
同じ人に同じ仕事をしてもらうことで、新たに仕事を教える必要もありません。
慣れた仕事なので、すぐにでも結果を出すことができます。
ただし、仕事を削減するとしても、職種により、難しい部分もあるでしょう。職種により仕組みを選別することも運用上大切です。
また、前に述べた、業務を細分化し、再雇用対象者の業務を軽減するという話については、やはり現場を取り仕切っている管理者に委ねる部分が多くなります。
そのような面では管理者の負担が増えてしまうでしょう。
しかし、現場の業務や担当者について、よくわかっている人が管理者です。
ですので、管理者と一緒に部署全体の仕事を細かく細分化し、割り当てを吟味して、既存社員も含めて再分割します。
特に既存社員においては残業が多い社員もおり、業務の平準化することで、残業削減の一助となります。
そして、会社は、再雇用期間の上限を超えても働けるような環境を整備します。若い人は別として、中高年の人は、自分の定年後についても考え始めます。
その時に、会社の中での自分の将来像を描くことができ、生活面での安心感も生じ、安心して勤務に邁進することができるようになるのです。
会社にとっても、再雇用社員が活躍できる場があることで、内外にアピールでき、更には業績に影響を与えることができるようになります。
(定年間際の社員に関しては、弊社ブログ『シニア社員を中心にキャリア自立を促進し組織の硬直化を改善する』をご参照ください。)
まとめ
会社は、再雇用制度を運用するにあたり、法改正による国からの要請であっても、現場の管理者と共に、再雇用者の属する部署内の業務を細分化し、再雇用者に対する業務を納得性のいく内容に見直すべきです。
そうすることで、定年間際に迫った人たちへのPRにもなります。