職能等級制度は、前回もお話しましたように、保有している能力について重点をおいています。その能力に応じて、等級として区分しているのです。
かつて多くの日本の企業で導入し、運用してきました。
もちろん現在でも活用している企業も多くあります。それだけ社内で運用しやすいのでしょう。
格付基準書
ところで、職能等級制度を導入するにあたり、いくつか手法があるかもしれませんが、
職能等級制度の運用には格付基準書というものを作成するのが一般的かと思います。
そして、それに基づいて社員の等級格付けを行います。
職能等級ごとに、その等級に達するために必要とされる能力(例えば、知識、理解・判断力など)をいくつか設定し、それらについて、一つ一つ定義していきます。
社員の持っている能力をその格付け基準書にもとづいて、定義した一つ一つの能力と比べ、該当する等級に当てはめ、等級を決定していきます。
簡単に記載しましたが、それぞれの等級に必要とされる能力について定義することは、それなりに労力を要しますので、時間がかかる作業になります。
ただし、それぞれの等級にあてはまる業務を想定し、業務内容を分析していくことで、能力の定義および、社員への当てはめ作業が比較的しやすくなります。
必要とされる能力について、事業の種類が多少異なっても、さほど大きくずれが生じることはありません。
参考図書などでもいろいろ紹介しており、少人数の会社が作業する場合は、それらを利用するとよいでしょう。
もちろん自社内で格付基準について議論し、決定していくことも望ましいですが、社員数の少ない会社は、時間的制約や担当する人員の制限などもあり、自社内で議論するのは難しいでしょう。
社員数の多い会社であれば、関係者の間で議論し決定して具体化しますので、運用もしやすくなるでしょう。
また、等級格付けの定義も細かく具体的に記載するより多少抽象的に記載することで、運用の幅が保てるようになります。
職能等級制度の運用
次に昇格や降格の運用ルールについてですが、このルールについては、等級制度構築時に定義を明確にしておく必要があります。
というのは、そうすることで、運用面でより客観的となり、トラブルの原因となる要素を取り除くことができるようになります。
一般職の場合は、比較的昇格しやすいように設定し、管理職の手前から昇格が厳しくなるよう設定します。
一般職には励みになり、管理職については、能力の向上を前提とするため、年功序列的な色合いを避けることができます。
さらに、給与制度と連動させ、昇格昇給もそれなりの額になるようにします。
社員が前向きになるようにし、自ら努力するような環境を作ります。
一方で降格のルールも明確にします。
評価にもとづくことが前提ですが、評価の低い社員をすぐ降格させることはせず、事前に一定の教育を施します。
そして、能力が向上したのであれば、そのままその等級に滞留しておけばよいのです。
無理やり降格に当てはめる必要はありません。
大切なことは、該当者本人が、自分の能力向上のための教育を前向きにとらえて受けることです。現場の管理者は該当者をそのように指導することが必要です。
職能等級制度を構築する際には、事前に昇格による等級の進み方の標準モデルを作っておきます。
例えば、大学卒業後標準の評価で進むとしたら、それぞれの等級に何年間滞留し、何年後に上位等級に昇格していくのか、といったようなものを作っておきます。
これは制度を運用していく際に参考にしながら進めるためですが、
現場の管理者もそのような指針のようなものがあると運用しやすくなり、自分の部下の管理や育成についても進めやすくなります。
このように、職能等級制度を運用しやすくすることで、現場の管理者がより自部署の管理運営を行いいやすくなり、業績を上げていくことにつながっていきます。
等級制度については、弊社ホームページ『等級制度』のページをご参照ください。
まとめ
職能等級制度は、まず格付基準書を作り、社員をあてはめます。社員それぞれの等級が決定するのです。
そして昇格や降格の決め方など、運用について細かく作り上げます。
難しい業務ではありますが、最初のところが肝心なので、しっかりと作り上げたいところです。