
会社が何か新しいことをしようとすると、とにかく時間がかかります。
社員に知らせようと、回覧しても、回覧だけではわからないと言われたり、忙しくて回覧を見るひまがないと言われたり、なかなかうまくいきません。社員は会社の活動に関心が低いのかもしれませんが、それでも会社は社員に説明する必要があります
人事制度構築も例外ではありません。人事諸制度を構築あるいは改定しようとする場合、中小企業では人事部あるいは総務部内で進めることになりますが、制度構築に関わっている社員は、自分の仕事を持ちながら進めることになりますのでかなり忙しくなります。コンサルタントが関わったとしても、その扱いによっては完成に時間がかかることもあります。
社員数が少ない会社では、経営者は制度づくりが比較的やりやすいと感じるかもしれませんが、評価制度や等級制度、給与制度などすべてを一度に構築あるいは改定しようとすると、それなりの工程を要しますので結構時間がかかります。
それでも、中小企業は、社員数が少ない分、素早く行動にでられるという利点があります。
事前および事後の社員への説明でも、直接全社員に話しかけることができますし、問い合わせに対しても細かく対応できます。社員は回覧を読む時間がなくても、不思議と説明を聞く時間は取れるものです。
したがって、人事制度を構築するといった大きなイベントでも、事前に社員に説明をした上でスタートし、社員が期待を抱いている間に完成させることで、会社が新しい方向に進んでいると社員に感じさせることができます。
そうするためには、制度が完成するまでにあまり時間をかけないことです。また、時間をかけて作ると、作成中に会社がどんどん利益を出し、急に規模が大きくなって、構築中の制度では追いつかないということになりかねません。
逆に、会社業績が何かの理由で急に悪化し、制度設計が中止になるということもあるかもしれません。
かつて私も数社で人事制度に取り組んだことがありますが、ある会社において、他の業務を持ちながら一挙に人事諸制度構築に取り組んだため、かなりの時間を要した記憶があります。間延びした感じがあり、スピードが大切であると実感しました。
では、制度設計に時間がかかるのに、社員が期待している間に完成させるという難しい対応をどのようにすればいいのでしょうか。
コンサルタントに丸投げするという方法もありますが、これだとかなり費用がかかるため、あまり経費をかけられない場合は他の方法を検討するしかありません。
限られた時間内で行うには、やはり地道に一つずつ作り上げる方法がよいでしょう。
人事諸制度の中では評価制度が重要ですので、最初に手掛けます。そして、完成させ社内に浸透させた段階で、等級制度に着手します。等級制度について構築あるいは改定すると社内に発表し、作業を開始します。評価制度同様に浸透させた後で、給与制度に着手すると発表します。
このように進めることで、社員が期待している間に完成させることで社員の期待感が持続されます。そして、その後の会社の業績に変化が生じても柔軟に対応できます。
もちろん、会社によってうまくいくとは限りません。しかしながら、会社のその時の状況に応じて進めることが大切です。