非正規社員を戦略的に正社員化する

一頃、世の中が人手不足となり、なかなか社員を採用できない時期がありました。もちろん、新型コロナが発生する前の話です。

ちょうどその時期は、働き方改革の一環として、同一労働同一賃金が導入されることになった時期です。

まず大手の企業から始まり、その後中小企業も対象になるということでした。

 

大手企業の中で、パート社員を多く雇用している会社が、パート社員や契約社員を正社員にするということがマスコミで発表され、新聞等でにぎわったことがありました。

 

行政の指針に基づいて、複雑な手続きを行って現状を維持するのであれば、正社員にしたほうが早い上に、様々なメリットがあると考え、一斉に正社員化に踏み切ったのでしょう。

企業のイメージアップにもなりますし、パート社員のモチベーションアップ、更には担当部署の作業負担割合の軽減などの正社員化に伴う利点があり、差し引きでプラスになったと思われます。

 

正社員として登用されるパート社員や契約社員の人たちも、定年までこの大手の企業で働けるという安心感であったり、正社員という道が開け将来への展望が期待されたりなど、パート社員や契約社員の人たちは喜んで受け入れたことでしょう。

 

一方で、共働きをし、税金や健康保険などでご主人の被扶養者扱いのまま働く、というパート社員の人たちもおります。

自分たちの生活設計もあるでしょう。そのような人たちはパート社員のままで働くことを選択するかもしれません。

 

パート社員は、事務所あるいは工場などで正社員より短い時間働き、残りの時間を子育てや、家事の仕事などをしたりして、自分の時間を有効に活用してきました。

会社も、製造現場の生産活動の増減などで、生産量の調整など、様々な点でメリットがあり、それを享受してきました。

日本の税法や社会保険関連の法律に応じて対応してきた、という歴史的な背景があります。

 

もちろん、パート社員の人の中には、正社員として働きたいと思っても、なかなか就職先を見つけることができないので、パートとして働くという人もおります。

また、子育てがあるので、短時間の労働をするため、パート社員として働くことを求めてきた人が、子育てが終了し、フルタイムで働きたいと思う人もいるでしょう。

このような人は、今回の改革はメリットがあり、よかったことでしょう。

 

ただ会社側から見た場合、今回の働き方改革に伴う正社員化は、コスト特に人件費が増大する懸念があるかと思います。

増加する人件費は、給与や賞与など、直接本人に支給されるものもありますが、それ以外に、会社負担の社会保険料や労働保険料など、直接社員に支給されないけれども、確実に費用として計上しなければならないものもあります。

 

従って会社として、それらの費用全体を計算した上で正社員化を進める必要があります。

現在は特に問題がないとしても、5年後あるいは10年後にそうした増加分のコストが会社の利益を圧迫することもありえます。

余力のあるうちに、適正人員の検討や、適正な人件費の策定など、対応を進めておくとよいでしょう。

 

ただ、正社員化については、このようなマイナス面だけをとらえるのではなく、プラス面も考慮した上で進めるとよいでしょう。

 

たとえば、正社員化することで、対象者のモチベーションが上がり、更に業務に熱心に取り組み、売上や利益に間接的に貢献することも考えられます。

また、人員配置など異動も考えられます。それに長期的な人材育成を行うことで、その人たちが将来的に会社の支柱として活躍してもらうことができるようになることもありえます。

 

パート社員から正社員になるということで、社員研修をさらに充実させていくことも可能です。

ただし、パート社員であった期間が長い人については、正社員になっても、意識がまだパート社員のままという人もいるかもしれません。

そのような人は、会社が何かをしようとしても、それを自分のものとして理解するまで時間もかかるかもしれません。

 

また、パート社員から正社員になった人の中には、担当業務を担う人たちのリーダーに登用したい人がいるかもしれません。

しかし、パート社員の期間が長い人たちが多い場合、横並びの意識が強く、うまくいかないこともあるかもしれません。

十分に検討した上で進める必要があるでしょう。

 

例えば、正社員化が行われた後で、できるだけ早く研修計画を立て、一定期間のうちに、能力開発のみならず、意識改革も行わなければなりません。

そうすることで、予期されるコスト増をカバーしていくことができるようになるのです。

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